税関でダメ! と言われたら

関税定率法第21条1項3号は「風俗を害すべき物品」の輸入を禁止している。実際にこの 条文に該当すると判断された場合、税関は所有者に対して
  1. 任意放棄
  2. 積み戻し
  3. 部分修正
のいずれかを求めてくる。1. は「没収に応じる」というわけで、2. は原産国へ 送り返すこと、3. が砂消しゴムなどで修正するということだ。だが、税関職員 や国際宅配業者が進んでは説明しない第4の選択がある。処分の取り消しを求める 税関長への異議申し立てである。さらに税関長が異議申し立てを棄却した場合 には大蔵大臣への審査請求という手段も保証されている。
税関職員や宅配業者から「任意放棄するか修正してください」などと言われたら、 断固として「税関長に異議申し立てをします。説明書を送ってください。」と 伝えよう。職員は異議申し立てについて説明する義務を持っている。
異議申し立てについて重要なのは最低限必要な項目が網羅されており、「通知が あったことを知った日の翌日から2ヶ月以内」という法定期間内に提出するという ことだけ。決まった用紙とかサイズとかはないので、手書きでもワープロでも 好きなようにして出せばいい。
法定期間内に提出したということをはっきりさせるため、書留や配達証明で出す のが安心だ。それ以外には手数料とか印紙とか一切いらない。また、これは法律 で保証された国民の権利であり、異議申し立てしたからといってあなたに不利益 がかかることもない。ただ、他の荷物が一緒になっているとそれが輸入できない こと、通常は業者がサービスで負担している倉庫の保管料が請求される可能性は ある。
異議申し立てから2ヶ月ぐらいすると決定がおりる。税関長で棄却された場合は 大蔵大臣へ審査請求をすることができる。これもちゃんと説明書が用意されている。
残念ながら現状でポルノ雑誌やポルノビデオの輸入禁止処分に対して異議申し立て や審査請求が認められる可能性はほとんどない。その先は裁判に訴えるしかない だろう。裁判でも、メイプルソープ写真集でも敗訴である。だが、異議申し立て のように誰もがお金もかからず簡単にできる手続きを起こせば、それが殺到すれ ば現場としてやり方を変えていくことになる。なにしろ、税関職員は国民から文 句を言われたことがほとんどないのだ。みんなで文句をぶつけていこう。


異議申立書のひな形

異議申立書

東京税関長 殿

 年 月 日
異議申立人
住所
氏名(捺印)
 歳(  年 月 日生まれ)
職業
下記の通り異議申立をします。
  1. 異議申立に係る処分
    平成○年○月○日付けで東京税関長が行った異議申立人に対する輸入禁制品該当通知

    輸入禁制品該当通知番号 第○○号 品名及び数量
     写真集「メイプルソープ」 1冊

  2. 異議申立に係る処分があったことを知った年月日
    ○年○月○日
  3. 異議申立の趣旨
    「1 記載の処分を取り消す。」との決定を求めます。
  4. 異議申立の理由
    別紙掲載のとおり。
  5. 処分庁の教示の有無及びその内容
    1 記載の通知書に「この通知について不服があるときは、この通知があったことを 知った日の翌日から起算して2月以内に東京税関長に対して異議申立をすることが できます。」との教示がありました。


(別紙)異議申立の理由

本件通知処分は以下の通り違憲・違法である。
  1. 検閲禁止違反
    現行の税関規制は、輸入出版物について、税関当局に、その表現内容について 強制的に検査し、その国内における公表を禁止する権限を付与するものであり、 公権力による表現の事前抑制を求めているという点で憲法21条2項前段が禁止 する「検閲」に該当するものであり、同条同項は公共の福祉による例外を認め ない絶対的禁止と解されるから、関税法及び関税定率法のうち税関検査に関す る各規定は、行政権による輸入出版物に対する検閲を認めている限度で、憲法 21条2項前段に反し文面上無効である。
  2. 不明確故に違憲無効
    関税定率法21条1項3号の「公安又は風俗を害すべき」との文言については、 「公安」が何を意味するかは全く不明確であるし、「風俗を害すべき」との 文言についても、これを「猥褻な書籍、図画等」と解するとしても、その「猥褻」 が何を意味するのかも不明確であるから、上規定は不明確の故に、文言上無効 と解すべきである。したがって、違憲・違法な上規定を根拠として行われた本件 通知も、当然に、違憲・無効である。
  3. 所持目的による輸入禁止の違憲・違法性
    関税定率法21条1項3号が、単なる所持目的である場合を含めて一律に「風俗を 害すべき書籍」等の輸入を禁止しているのは、憲法21条1項に反する過度に広範 な規制であり、文面上無効と解すべきである。したがって、違憲・違法な上規 定を根拠として行われた本件通知も、当然に、違憲・違法である。


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