岡山大学新聞 通刊238号 1978年9月30日発行

書評

『やさしいかくめい』

プラサード編
シリーズ(1)リアリティ
草思社 八00円
 アメリカのフリーク達が「使う人の為に」作ったホールアースカタログなどのカタログが日本では単に物を羅列した何とかカタログになり、自分達の表現手段であったミニコミやフリーブレスがいつの問にかタウン誌にスリ替えられてしまった様に、僕らの生み出した方法がどんどん商業資本に取りこまれてしまう世の中、その中で実に6年間にわたって吉祥寺(東京)を中心にフリープレス「名前のない新聞」を発行し、都市でのフリークスの運動に影響を与えて来たアパッチこと浜田さんを中心とする人々が「名前のない新聞」百号発行を一つのステップとして、創り出したのがこの「やさしいかくめい」というシリーズである。
 この本は新しい世代の百科全書となるだろう。今までマスコミによってゆがめられたり、興味本意に報道されて来た日本のフリークスのかなりの部分を網羅している。
 この類の記事は今までミニコミなどでバラバラにしか読めなかったが、今回草思社という一般的なルートでもってまとまった物が簡単に手にはいる様になったのだからぜひ多くの人が読んで、『ひとりひとりの生命をあらためることで社会を変えていこうとする新しさ』にぜひ触れて、別の世界に目を開いてもらいたい。
 今回発売された第一巻の「リアリティ」、これはこのシリーズの全体の序章とも言うべきものであり、まず発想を変えること、自分自身を大切にしよう、と述べている。リアリティとは現実であり、生活であり、真実であるのだ。
 と書くとなんだか宗教か哲学の本みたいに思えるかも知れないが、西荻窪で無農薬野菜の販売やフリースクールをやっている「ほびっと村」のレポや京田舎で農業をしているビルの話などかなりおもしろいのではないだろうか。
 とにかくこれからもシリーズでどんどん出して行く予定なので大いに期待したい所だ。次号は十月十日発行予定で「出産」。なお今後の発行費用を集める為一口干円の債券を募集してる。


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