丘の上に自力で30m タワーを建てた

ロケーションが良く、近くに民家のない高台にシャックを設け、タワーを建てて大型ビームを乗せ、キロワットをぶち込む。アマチュア無線家なら誰もが持つであろう夢を、開局30年目にして実現することができた。ついでに1アマも取得、秋にはKWステーションが開設できそうだ。(FARC NEWS 200号より)

土地は1999年の成人の日、たまたま新聞にはさまっていたチラシ広告で見つけた八王子市内の高台の分譲地。建物が建てられない市街化調整区域なので激安。実際に現地に行ってみると斜面の区画ならばさらに安い。南側は斜面で80mぐらい離れた谷の下に1軒家があるだけ。北側は都立自然公園、西側は山林なので建物は建ちそうにない。市街化調整区域といいながら分譲地のあちこちにプレハブ倉庫は建っているし電力は共同ポンプ用に200Vを引くという。まさに無線をやるために売り出した土地としか考えられない。西端の斜面を70坪ほど購入した。

パンザマスト建柱に挑戦

CQ誌のハム交換室を見ると18mの中古パンザマストが売りに出ている。JJ1SWK西原君の仕事先でちょうどパワーゲート車を購入したので、積んでくれるということで、雨の中、二人で所沢まで取りに行った。
パンザマストを建てるには直径70cm、深さ2.5mの穴を掘らなければならない。パンザマストの最下ユニットがぎりぎり入る太さである。こうすれば、コンクリートなど使わず、土の力だけでマストを支えることができる。しかし70cm径の穴を掘るのは大変だ。普通のスコップは狭くて使えず、かといって小型スコップでは作業がはかどらない。DIYショップではさみ式のスコップを見つけ、これで掘ってはバケツで土を掻き出すこと6日間。雨が続き、全身泥まみれになって穴を堀った。
穴の底には家庭用コンクリートを2袋、粉のまま敷き詰め、さらにコンクリート板を敷いて水平を取った。
パンザマストの下の方のユニットは直系60cm、重さも数十キロある。これを2ユニットつないだ状態で穴に落とさなければならない。
どうするか。結局、4mの足場パイプを3本やぐらに組み、滑車で釣り上げて落とすことができた。府中クラブメンバーも雨の中、ずぶ濡れになりながら手伝ってくれた。
下のユニットが建ったら、パンザに滑車を取り付けた足場パイプ(ボーズという)をくくりつけ、それで順番に1ユニットずつ積み上げていく。ユニットをはめ込んだらボーズを上に付け替えて同じ作業の繰り返しだ。この時、足場パイプで指をはさんでしまい、病院に担ぎ込まれて50針ぐらい縫う目にもあった。もうちょっとで指先がなくなるところだった。
この事故などで当初の目標としていたALL JAコンテストには間に合わず、6月6日のALL JA1コンテストで1.9MHzのスローパーアンテナを張ったのが初オンエアとなった。
パンザマストは中古ならばかなり安く入手できるし、重機なしでも建設可能、メンテナンスはほとんど必要ない。だが上り下りは楽ではないし、足場ステップが左右食い違いについているので足に力が入れにくく、上で作業をしているととても疲れる。これからタワーを建てようという人にはあまりお勧めしない。

中古のKT-28SRを入手

パンザマスト建柱に引き続き、タワーを建てることにした。コンテストMLで騒いでいたら新潟の方がクリエイトのKT-28SR改、全長30mの中古を安く譲ってくれることになった。
当初、斜面の中腹に建てようかと考えていたが、かなりの急斜面のため、そこまでユンボを降ろすのが難しいということが判明。そこで平坦部の西端に建てることにした。ユンボの操作は電気工事会社を経営しているJR1HBN八島さんがやってくれた。
さすがにユンボを使うと4m四方、深さ3mの穴が半日で掘れてしまう。壁が崩れぬよう矢板で抑え、砕石を敷き詰めてランマーで固める。

中古プレハブでシャック

パンザマストが建ってから、毎回車でやってきては発発を回し、同軸ケーブルを車内に引き込んでの運用を続けてきた。だが、地面がいつもぬかるんでいて車も同軸も靴も泥だらけになる。なんと言っても車内での長時間運用は疲れる。そこでシャックを建てることにした。最初は防犯の面から頑丈そうな中古コンテナを考えたのだが、基礎工事が大変そうで断念。
中古プレハブを扱っている業者を探したところ基礎別で6畳の勉強部屋タイプが建て込み含めて15万円という。基礎は斜面に足場パイプを打ち込んで高床式で作ることにした。なにせ残土の上に建っているようなもので、土砂崩れでシャックごと谷底に転落しないか不安だが、今のところ踏ん張っている。

市役所から工事中止命令

タワーの建設中にトラブルが起きた。ぼくの敷地の北隣を所有している人から、タワーを建てられては景観を損なうからやめてくれというのだ。位置をできるだけ東側にずらし、直接挨拶にも行ったのだが話し合いの最中に八王子市役所建築指導課に通報されてしまった。建築確認を取ってないのだからどうしようもない。市役所から工事中止命令が降りた。担当官と話したところ、市街化調整区域は建物の建設は認められないがタワーなど工作物はOK。受理されるかわからないが、今からでも建築確認を出してみるようにとのこと。ところが、工事中止命令が出る前に基礎フーチングのコンクリートを打ってしまっていた。建築確認工作物担当官は鉄筋の太さや組み方が確認できないということで受理に難色を示す。
何度も何度も八王子市役所に足を運び、ようやく2月1日付けで「建築確認は受理するが、検査済みは出さない」という変則的な形で決着が付き、工事を再開することができた。

ALL ASIAN DX を前に念願の第二タワー

工事を再開したものの、素人の週末作業だから遅々として進まない。ようやく3月27日にフーチングからの立ち上がり部分1.2mの高さに3.75立米の生コンを打った。
ここに、近所の鉄工所で作ってもらった基礎パイプを建てる。タワーが建つとコンクリートに埋もれてしまう部分なので中古が存在しない。建てるのは鉄工所の人にやってもらったが、現地で微妙な寸法違いなどが発覚し、アセチレンで穴を開けなおしたり、溶接する羽目になる。
とうとうALL JAにも間に合わず、ALL JAはパンザマストに乗せた28MHz 5エレからF28Hに参加。
AC 200V・100Vの引き込み工事が間に合ったのは助かったし、結果として全国優勝だったのでよかった。また、3回目の挑戦にしてようやく1アマにも合格し、さっそく1KWへの変更申請を出した。
5月15日には最後の生コン打設。この時は型枠が一部ゆがんでしまい、生コンが大量に漏れ出して焦ったが、バケツで汲み上げるなどしてなんとか収まる。
この頃から仕事が忙しくなり、ALL ASIAN DXも駄目かとあきらめ始めたが6月10日、とうとう第二タワーを建てることができた。分譲地の一角を大型クレーンなどの駐車場に使っている基礎工事屋さんがいて、そこにクレーンの出動を依頼。府中クラブメンバーも駆けつけて工事に協力してくれた。新潟から到着した時点で2段ずつつながった状態であったが、それをさらに2段ずつつなぐ。そしてクレーンで吊り上げて下のユニットと接続していくのだ。上まで登るのは自分とJN1NDK内藤OM。内藤OMは岩登りの経験があるので、高所作業も慣れたものだ。下のユニットと上のユニットの接続部分でボルト穴が合わなかったりして意外と手間取り、ローテーターやマストを積んだ最上段ユニットを取り付け終わった時には、もう真っ暗になっていた。
その翌週はALL ASIAN DXコンテスト当日。すでに9時からコンテストは始まっているのだが、府中クラブメンバーは21MHzの5エレ八木と14MHzの4エレ八木を取り付けるのを手伝ってくれた。30mタワーの八木からJA1ZGOがオペレートを開始したのは昼の12時近くになってのことだった。

これから

現在、18mのパンザマストには上から3バンドGP(X7000)、50MHz 6エレ八木、28MHz 5エレ八木が、30mタワーには21MHz 5エレ八木と14MHz 4エレ八木が乗っている。21MHzの八木は引き上げ時にブームを曲げてしまい、とてつもなく不恰好。さっさと曲がったパイプを交換したい。また、昨年のハムフェアで購入した7MHzの2エレHB9CVも整備して引き上げたい。
それよりも、いまだにアース線をタワーに接続してないし、タワーの周りの穴は全部埋め戻していない。こっちを急いでやらないと危なくて仕方が無い。シャックの床は泥だらけだし、寒くなればすきま風が侵入してくる。この整備も進めたいし、せっかく降りた1KW変更許可も周辺調査をやってないのでたな晒しのまま。やることはたくさんある。

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