08/03 情報経済学期末試験

一昨年から、神奈川大学経済学部で非常勤講師として「情報経済論」というのを教えている。経済学らしい情報経済論というと、情報の非対称性、モラルハザード、IT投資と経済成長、ノランの発展段階説、シノットの発展論などが中心になるようだけど、自分にはあまり興味がない。むしろIT企業の経営者として非常勤講師を頼まれたのだから、インターネットや著作権をはじめとする最新のIT事情を中心に話してきた。ITやインターネットが不可欠な社会において、自分たちの権利を守り、犯罪を犯さず、より良い生活を送るために必要な基礎知識を身につけて欲しい。

昨年は履修生が260人を超えてしまい、レポートはもちろん記述式試験もやってられないので、マークシートでの択一式試験を行った。今年は、「マークシート一発で決める辛い先生」という噂が広まったのだろうか、履修生は半減以下となった。そして今回もマークシートでの択一試験を実施した。受験者89名全員の採点、評価が終わって先ほど大学へ発送したところ。

残念ながらできが悪い。25問、100点満点なので1問4点として計算すると半分以上が不可!となってしまう。これはちょっとまずいので、60点以下は下駄を履かせて8割を合格とした。学生には、60点で「可」となっていても、本当は48点ぐらいしかとれてなかったことを自覚して欲しい。

まず、講義で使ったパワーポイントのスライドを全部学生向けサイトにアップロードし、試験では持ち込み可としたのだが、これに安心した学生が多かったようだ。1回の講義で25枚から30枚のスライドを使うので、トータル350枚。ちゃんと試験勉強せずに60分間で読もうとしても、どこに何が書いてあるのか探しているだけで終わってしまう。

それに資料はあくまで資料であって、講義でしゃべったことを頭に入れてなければ理解はできない。たとえば公開鍵暗号で、送り側と受け手側、どちらの鍵を使って暗号化するのかとか、個人情報保護法で個人情報の対象になるデータはどれかとか、著作権侵害にあたる行為はどれかとか、何度も強調して説明したはずなんだけど。

正解率が高かったのは

「企業活動におけるBCPを説明したものはどれか」に対する「災害やシステム障害など予期せぬ事態が発生した場合でも、重要な業務の継続を可能とするために事前に策定される行動計画のこと」の81人

「社員の不正を抑制するための内部統制にあたるものはどれか」に対する「作業の実施者と承認者を分ける」の79人

「個人情報保護法の目的はどれか」に対する「個人情報の不適切な取り扱いによって、個人の権利利益が侵害されることを未然に防止する」の75人

逆に正解が少なかったのは

「災害発生時に備えて企業が事前に備えておくべき対策として、正しいものを一つ選びなさい」に対する「災害時には顧客、従業員の安全確保を最優先すべきであり、業務継続はその次の課題である」の10人

「フィッシング詐欺を避ける方法として、効果的なのは次のどれか」に対する「Webブラウザを最新のバージョンに更新し、セキュリティソフトを導入しておく」の12人

「エンドユーザーコンピューティングとはどのようなものを指すか」に対する「現場で実際に業務を行う者が自ら積極的にシステム構築や運営に関わること」の24人

だった。

「災害発生時に備えて企業が事前に備えておくべき対策」として「データセンターでの集中管理はやめ、各部署ごとにサーバーを分散して設置する」を選んだ学生が一番多かったが、ここまで分散すると管理ができないからダメだと講義でちゃんと言ったはず。

「フィッシング詐欺を避ける方法」では「メールのFrom欄で発信元のメールアドレスを確認する」を選んだ学生が多かったけれど、From欄はいくらでも偽装できるから、チェックにならないという話もしてある。

「エンドユーザーコンピューティング」では「顧客の購買動向、趣味嗜好などをデータベース化し、その人にあった商品を提供すること」を選んだ学生が多かった。これはデータベースマーケティングとかOne to Oneマーケティングという手法だ。

「グーテンベルグは1446年に活版印刷を発明したが、これは当時のヨーロッパ社会にどのような影響を与えたか」に対し、「ローマ法王の権威が高まった」「中国から紙や火薬、羅針盤など新しい技術が導入され、ルネッサンスをもたらした」と答えた学生も多かった。活版印刷で聖書が大量に印刷され、農民や商人が聖書を読むことで教会の権威が揺らぎ、宗教改革につながったので、ローマ法王の権威が高まったのはまったく逆だし、ルネッサンスは14世紀に始まっている。

来年も非常勤講師の口がかかるかどうかわからないけれど、やるなら講義のやり方と試験方法を基本的に変えないと、結局ITを理解してもらえないということだけは確かなようだ。

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