10/23 「TeXユーザの集い2010」に行ってきた

今日は、駒場の東大生産技術研究所で開催された「TeXユーザの集い2010」に行ってきた。朝9時半開会ということで、最初から参加するつもりだったが朝起きられず。一番興味がある『パネルディスカッション「商業印刷におけるTeX」』が16時からということもあり、のんびりと午後から参加に切り替えた。

東北沢から歩いて数分の生産技術研究所は20年近く前、開発の仕事でしばらく通ったことがある。門や正面の古い建物はそのままだったが、山羊は見当たらなかった(なぜか庭で飼われていた)。

ちょうど到着した時は午後の部スタートで、Norbert Preiningさんによる「TeX Live 2008–2010」の講演が始まったところ。TeX Liveなる言葉を聞くのが初めてで、英語ということもあってさっぱりわからないまま。途中で眠ってしまった・・・

次は関西大学の土村展之さんによる「トラブルを未然に防止するTeX関連ソフトウェア利用法・開発法」。TeXのインストールが面倒なため、一度環境を構築してしまうとなるべく変更しないという消極的な使い方が主流になり、新しい技術などが導入されにくいという。

・インストール作業の再現性を確保する
・インストールの方法に憶えやすい名前が付いていること
・更新のタイミングが頻繁すぎず、稀すぎず

という3原則が必要だという。
ここでTeX LiveがTeXのディストリビューションパッケージであることが判明した。TeX Live 2010ではpTeX、W32TeXが含まれたので、今後日本語対応などをきちんとやることで、インストールはTeX Liveで決まりではないか。

また、TeX関連のソフトウェアを開発する人はライセンス、ファイル名をきちんと決め、アップデートを自動化することが肝心だという。オープンソフトで配布する以上、ライセンスは修正BSD、GPL、LPPL(LaTeX プロジェクト公衆利用許諾契約書)のいずれかを選ぶのが妥当だろう。あるいはいっそ商用ライセンスにしてしまうか。自分でオリジナルなライセンスを作ることは、ディストリビューターに契約条項のチェックを強いることになり、事実上ディストリビューションから外してくれと言っているに等しい。

集合写真撮影の後、パネルディスカッション「商業印刷におけるTeX」。これが聞きたかったのだよ。パネラーは奥村晴彦先生、岩波書店『科学』編集長の吉田宇一さん、IT系編集プロダクション「トップスタジオ」編集者兼DTPオペレータでDebian Project公式開発者でもある武藤健志さん、そして三美印刷の本田友亮さん。

吉田さんは岩波書店の理工学書部門を統括しており、最近では高木貞治の『定本 解析概論』をTeXで組んだという。ちなみにぼくの手元にある『解析概論』は73年発行の改訂第三版第14刷。当然ながら活版印刷だ。編集者にとって一番大事なことは著者に原稿を書かせることであり、TeXであるかどうかはあまり関係ない。岩波では年間700冊ぐらい出しているが、その中でTeXで組み版しているのは数パーセント。TeXだから出版する、TeXじゃないから出版しないということはなく、中身が大事。著者がTeXできっちり書籍の体裁にまで組んだ原稿を持ち込まれると編集者の意欲を失わせるので、ラフな構成案程度がいいだろう。

武藤さんはTeX組み版の仕事はあまり多くなく、ほとんどがInDesignなどで組んでいること、ただTeXのスタイルシートをいじれる出版社はあまりないので、そういう仕事が回ってくるという。

本田さんはプリプレスのプロとして、多くの出版社や学会からTeXで組まれた組み版の最終調整などを手がけているとの話。ぼくは最近出したりTeXで組み版している本では、すべてPDFにして入稿~印刷というパターンなので、生TeXファイルを出版社や編プロ、印刷会社に持ち込むという流れそのものにびっくりした。

ディスカッションでは、著者があまり複雑なマクロを使ってガチガチにレイアウトを決めたファイルを持ち込まれるのが困るという。確かに他人の書いたマクロを解析してレイアウトを出版社のスタイルに合わせるのはすごく面倒だろう。TeXのマクロは、マクロがマクロを呼ぶようなところがあり、どれを直せばいいのか途方に暮れることがある。

懇親会には出ずに帰宅。

TeXユーザの集いに出たのは今回が初めて。東京書籍印刷でお世話になった小林さん、元スーパーアスキーの風穴さん、元コンピュータワールドの高山さんに再会できたこと、奥村先生をはじめ三美印刷の本田さん、オーム社の森田さんなどキーマンとお会いできたことが大きな収穫だった。

TeXは89年にビジネスアスキーから『レーザショットガイド』という本を出したとき、日本語LaTeXというパッケージを紹介したのがきっかけで、TeXの解説書、TeXで組んだ本など何冊も出してきた。ライフワークだと思っている。今回のパネルディスカッションでも出ていたが、初心者へのTeX教育をどうするかといった点でなんらかの貢献ができたらうれしい。それと、あまり発注はないみたいだけど、TeXができる編集プロダクションとして仕事が取れたらいいな。

「10/23 「TeXユーザの集い2010」に行ってきた」への1件のフィードバック

  1. 大学教科書を出版しているある財団の出版部に属しているのですが(延長された65歳定年を過ぎてまだ嘱託で残っていますがこの8月で契約は切れる予定)、物理や情報系、IT関係の科目の編集にあたってテフのできる編集者あるいは原稿依頼から校了までこなせる制作会社がないかと探しています。ブログを拝見しますと都内で活躍されているようですが、一度お会いしていろいろとお話をうかがいたいのですが、私は水曜日・木曜日の昼間で都内ならばいつでも伺えます。返事をいただけましたら幸いです。

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