10/14 TeXConf2017に行ってきた

TeXの学会? TeXConf。今年は藤沢市の日大生物資源科学部で開催された。10時スタートだったけど,開場に着いたのは11時過ぎ。家からだと2時間近くかかるんだもの。小田急線の「六会日大前」(むつあいにちだいまえ)というのも初下車。「むつあい」と読めず,「ろっかい」だと思っていたし,新宿から小田原行き乗ったら,途中藤沢行きに乗り換えなければならず,危なかった。

というわけで,鹿野桂一郎さんの『TeXは軽量マークアップの夢を見るか』と細田真道『Extract PDFmark による PDF ファイルサイズ削減』は聞き逃してしまった。ちょうど寺田侑祐さんの『PDF加工ツールとしてのTeXの実力とデジタル採点』が始まる前。

これがすごくマニアックな内容。寺田さんは東大受験指導塾「鉄緑会」のスタッフ。ここで600人近い塾生が受ける試験問題の制作から採点,返却までをTeXで効率化したという。問題をTeXで作るには一般的で,自分もやっているが,採点をTeXで効率化するというのは初めて聞いた。

普通は答案用紙1枚を一人の採点担当者が全部採点する。しかし,問1なら問1だけ,問2なら問2だけをまとめて採点した方が余計なことを考えなくて良いのでスピードアップできる。工場の流れ作業のようなものだ。しかし,1枚の答案用紙をそれぞれの担当者に順番に送って採点するというのはかなり煩雑な作業になる。そこで鉄緑会でやったのは,TeXを使って答案用紙のスキャン画像を問ごとに切り分け,まとめたものを作ってしまうという方法。

TeXのincludegraphic命令でPDFを読み込むときに,画像全体のどの領域を読み込むかという範囲指定ができる。これを利用して問1だけ,問2だけ・・・という切り分けを行い,それぞれの回答をまとめたPDFを作成する。このとき,受験生の名前は消して受験番号だけにするので,えこひいきなどの問題も無くなる。

採点担当者はiPadとペンを使って採点し,必要があればコメントを書き加える。

こうして採点が終わった問題ごとのPDFファイルを,またincludegraphic命令で切り分け,受験生一人一人の答案用紙として合体させる。

切り分けの範囲指定とか,大勢が同時に採点したときのWiFiの速度低下とか,PDFファイルの容量削減とかいろいろな苦労やノウハウがあるようだ。しかも,これら一連の操作をTeXのコマンドで記述し,誰でもバッチ処理できるようにしたというから驚いた。奥が深い。

昼食は学食で食べたが,配膳が2人ぐらいしかおらず,長蛇の列。やっとたどり着いたときには定食が終わっていた。

午後は暗黒通信団の『TeXを中心に据えたインフラ群を多人数で使っている出版実例』,山下哲・小林茂樹・牧下英世・高遠節夫さんの『KeTCindyによるPDFスライド教材の作成』,朝倉卓人さんの『expl3 入門』,プライニング ノルベルト (PREINING Norbert)さんの『updmapとfmtutil ー 最近の更新と新しい機能』と続いた。

暗黒通信団はTeXを使って同人出版を行っているグループ。同人出版と言ってもちゃんとISBNコードを取得して一般書店にも流通させている。「Word原稿だと全角・半角が混在する,段落に全角空白を入れる人がいる」と言ってたけど,これはWordから吐き出したテキストファイルをsedやawkなんかのフィルターで整形すればいいと思う。またTeX原稿でも処理系のバージョンによってjsclassなどに違いがあり,レイアウトが異なってしまうことがあると言ってたけど,学会誌のように出版側で独自のスタイルファイルを作って,それを使って原稿書くように指示すればいいのではないだろうか。GitLabというバージョン管理システムで複数編集者による編集の同期を取っているとのことだが,元々ソースコードのバージョンを管理するシステムなので,差異が行単位で示されるため,1段落を1行にするような書き方だと把握しにくく困ると言うのは新鮮だった。自分の原稿や学会誌の原稿でも1行の長さを気にすることは無かったから。複数編集者による編集とかバージョン管理システムを使ってないからでもあるけど。

朝倉さんのexpl3入門は,現在開発が進められているLaTeX3のプログラミング言語expl3についての簡単?な解説。恥ずかしながらLaTeX3なんて知らなかったし,もちろんexpl3も初耳。調べると,LaTeX3プロジェクトはまずLaTeX3を記述するためのプログラミング言語expl3の仕様制定が先行し,それがほぼ固まった状態らしい。今後,マークアップ言語とレイアウト言語が作られるという。現在のLaTeX2eも,そもそものTeXもチューリング完全なプログラミング言語という側面を持っているけど,マークアップ言語やレイアウト言語と混在一体になっており,極めてわかりにくい。というか,自分ではほぼいじったことない。

LaTeX3とexpl3ではそれがきちんと分離されるというのだが,なじみの無い話だったので,内容はほとんど理解できず。

ノベルトさんのupdmapとfmtutilは,どちらもフォント関係のツールについて。こちらも自分はぜんぜん使ってないので,さっぱり。

LaTeXを使うようになって20年,解説書を何冊か書いてきたし,今も日常的にLaTeXの仕事やっている。でも表面的な実務に追われて本質は理解してないんだなーというのを痛感した。仕事では実務=指示通りに組み版できること,が一番大切なんだけど。

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