01/28 『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』を読んだ

去年1月に第1刷が出て,いまだに話題になっている『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(原田曜平 幻冬舎新書)をようやく読んだ。

ヤンキー経済

  • 『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』
  • 原田曜平
  • 幻冬舎新書
  • 2014年1月30日第1刷発行,2014年5月30日第6刷発行
  • 定価780円+税


ここで使われている「ヤンキー」とは,かつてのリーゼント・そり込み・ボンタン・ヨーランのツッパリではない。生まれ育った地元が大好きで,都会に出るつもりがなく,出世やITへの興味もなく,休日はイオンモールにたむろし,中学時代の友だちと遊び,酒やたばこ,パチンコ,ブランド物にお金を使い,さっさと結婚して子どもを作り,家族や友だちを大勢載せられる高級ミニバンが憧れの若者たちだ。80年代までの不良がヤンキー1.0,2000年代前半までのチーマーがヤンキー2.0,そして現在は残存ヤンキーと地元族が合流したヤンキー3.0なのだそうだ。彼らがなぜヤンキーなのかは不明。

大学生もいるけれど,中卒や高校中退,専門学校卒で職業はとび職や解体業,携帯ショップ店員,居酒屋店員,雑貨店店員,コーヒーショップチェーン店員などがメイン。

彼らの発言で驚くのが「地元を離れたくない」「都心に行きたくない」という強い意志だ。たとえば渋谷まで16分の至近距離である川崎市中原区に住んでいる女性が,「いつかは東京に行きたい」という。人混みが怖いとか,渋谷にトラウマがあるとか,何か精神的な問題を抱えているのではないだろうか。地元を愛していると言うものの,地元の文化や歴史にこだわりがあるわけではない。日本全国,中学時代からの同級生が住んでいて,親と同居できればどこでもいいのだ。

そもそもこの本を買ってみる気になったのは,日の出町に住む地元族夫婦のコメントが目に付いたから。小中学校の同級生どうしで結婚し,夫は年収300万円,妻は200万円で親の土地に家を建てて住んでいる。妻はこう語っている。

「日の出の若者にとって、イオンは夢の国。イオンに行けば、何でもできるんです」

ディズニーリゾートやUSJが夢の国ではなく,自宅から10分もかからないイオンが夢の国,何でもできるとは,なんとつつましい夢なんだろう。

日の出町はこのところみんなの森財団やNPO法人花咲き村の活動で,毎月通っている。メンバーの多くは都会から森林再生ボランティアで通ってくるヨソ者だ。地元民にしても,ヨソ者と積極的に交流している人は「ヤンキー」とはちょっと違った存在なのだろうか。少なくともイオンモールが大好きという声は聞いたことがない。

自分が日の出町の活動以外で交流のある20代というと,クライマーだったり,ミュージシャンだったり,ビジネス関係だったりする。みんな大きな目標をもち,その実現に向けて地域関係無く動き回っている人ばかり。本書に出てくるヤンキーとはどこで出会えるのだろうか。見えてこない? それとも実際には存在しないバズワード? 著者は博報堂のマーケターなので,新しいマーケットとして「ヤンキー」なる,大人世代にはちょっとショッキングな言葉を再定義したのではないだろうか。

自分もかつては地元族だった。都心に出るのが面倒,電車通学などまっぴらごめんということで小学校から中学までは地元の公立。同級生にはヤクザになったとか,ホステスやっていて客に殺された子もいれば東大理学部と医学部を出て医者になったのもいる。まさに玉石混淆。高校も自転車で15分のところに進んだ。高校時代にバンド活動を始めたけれど,主要メンバーは中学の同級生。ギタリストの家に勝手に入り浸ってレコード聞いてたばこ吸っていた。大学すら自転車通学可能な農工大や電通大を第1志望にしていた。そういえば一人旅はもとより,友人たちと旅行した記憶もない。それが700km離れた岡山まで一人で受験に行き,相部屋の学生寮でもまれ,香川の女の子と結婚するのだから,人生どこで変わるか分からない。

著者が若者のネットワークを駆使して調査したというヤンキー3.0の実態は,「そんな世界もあるのか」と読み流せるが,第4章”これからの消費の主役に何を売るのか”はいただけない。「高級ブランドがおトクに買える,かわいいアプリ」とか「ご近所に恥ずかしくない子供服」,「限度額が低いクレジットカード」などなど。彼らを新しい市場として開拓するヒントらしいが,ほとんど具体性はない。その点は博報堂か著者にお金を払ってコンサルティングを受けてくれということか。

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