【書評】『エレガントな宇宙』 あまりエレガントではない超弦理論解説

エレガントな宇宙

エレガントな宇宙
―― 超ひも理論がすべてを解明する
ブライアン・グリーン 著 /林一 訳 /林大 訳
草思社
定価:2200円+税

1999年に原著が上梓され、2001年に邦訳が出ている。本郷での打ち合わせ帰りに、本郷三丁目駅近くの古書店で購入。

著者のブライアン・グリーンは1963年生まれの物理学者で超弦理論の研究者。つまり本書は著者が36歳という、気鋭の新進物理学者として注目を集め始めたころの処女作である。

数式を一切使わずに超弦理論(翻訳では「超ひも理論」となっている)を「分かりやすく説明した」ということで、当時はかなり話題になったようで、あちこちで超弦論の入門書として提示され、松岡正剛の千夜千冊でも取り上げられている。

ただ、正直言ってエレガントで分かりやすい解説書とは思えない。まず、500ページを越えるボリュームがあるのだが、188ページまでは相対性理論と量子力学の解説であり、超弦理論は登場しない。当然ながら目新しい話もない。

191ページの第3章からようやく超弦理論に入る。しかし、カラビーヤウ空間にこだわりすぎではないだろうか。超弦理論が成り立つ6次元空間をモデル化したのがカラビーヤウ空間なのだが、どうやっても私たちの3次元では6次元空間はその写像しか認識することができない。いくらCGを駆使しても、「こう見えるかも知れない」という想像図に過ぎないだろう。

このあたり「大栗先生の超弦理論入門」では1点の手書きイラストを示し「カラビーヤウは6次元空間なので、そのままでは紙の上に描くことはできない。しかし3次元の立体が2次元の写真に撮れるように、高次元の物体も2次元に投影することはできる。カラビーヤウ空間をある方向から2次元に投影するとこのように見える」と、あっさり流している。

CGで精密な、「それっぽい」図を載せてしまうと、かえってカラビ-ヤウ空間とはこういった空間なのだという先入観を植え付けるように思える。

また、本書では「ゲージ理論」「ゲージ対称性」という言葉が何度も出てくる。索引項目にもなっているのだが、そこに挙げられているページを開いても、ゲージ理論とはどういうものか、一言も説明されていない。単にゲージ理論、ゲージ対称性という言葉が出てくるだけである。

ゲージ理論はWikipediaによれば

ワイルは一般相対性理論における二点間の距離を変えない座標変換(等長変換)の自由度を拡張し、スケール変換の下での不変性もまた時空の局所対称性であるとし、各点で「物差し」(”ゲージ”)を変えても理論が変わらないことを要請して電磁気学の導出を試みた

という考え方。電磁気学から量子力学、素粒子論まで幅広く使われているが、あまり一般的な言葉とは思われない。それを非専門家向けの解説書で乱発するのは不親切だ。

なお、これは翻訳の問題なのだが、車の長さが16フィートとか、時速100マイルとか非MKS単位系を混在させないで欲しい。他の場所では時速190キロとか時速10キロメートルといったMKS単位系で表記しているのに。通常は毎秒30万キロメートルなど、秒速で書かれる光速やそれに近い速度を時速10億数千キロメートルといった単位で記載するのもうんざりだ。

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