著作権保護期間延長でどうなるのか

先日の参議院選挙では「ウソつかない。TPP断固反対」をかかげていた政党が圧倒的多数を占めたので、たぶん日本はTPPには加入しないのでしょうが、大人の事情でどうなるか分かりません。
tpp_jimin

TPPというと農産物や自動車の関税ばかりがクローズアップされていますが、IT分野では知的所有権に関わる大きな変動が予想されます。それは米国が他国に対し、

  • 著作権保護期間の延長
  • 著作権侵害の非親告罪化
  • 法定損害賠償金の導入

を求めているからです。

著作権保護期間が延長されるとどうなるのか

現在、日本の著作権法では著作物は著作権者が亡くなってから50年間保護の対象となっています。映画などは公開から70年です。実は映画も以前は50年だったのが米国からの圧力で70年に延長されました。米国はさらに文学や音楽なども70年に延長するように求めてきています。

そもそも米国著作権法も以前は56年間だったのが、1976年に保護期間が75年へと延長されました。これは1928年に公開されたミッキーマウスの著作権が1984年に切れるの対し、映画会社のロビー活動が成果を上げたと言われています。こうして2003年まで生き延びたミッキーマウスですが、その著作権切れを前にして1998年、再び法律が改定されて映画の著作権は95年間となりました。2023年には期限切れのはずですが、また期間延長されるのではないかと噂されています。

著作権に限らず、知的所有権というのは一定の期間、権利者の権利を守ることで知的生産活動を発展させるることを目的としていますが、それは未来永久に保護するというものではありません。たとえば特許は10年間たてば権利が消滅し、誰でも同じモノを合法的に作ることができます。保護期間が短すぎては権利者の権利が充分に保護できませんが、長すぎては文化や技術の発展を妨げることになります。

著作権法では

第1条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

と文化の発展を目的に掲げています。

外国作品の日本における著作権保護期間については、第二次戦争中の3794日(米国、英国など)を戦時加算されていますが、作者の死後50年以上経った文学や音楽、公開から70年以上たった映画はだれもが自由に出版したり、利用できるようになっています(翻訳モノについては翻訳者の死後50年)。古い映画のDVDが500円などで売られているのは、このためです。

文学作品についていえば、青空文庫などが、ボランティアで著作権の切れた作品を入力し、整理して公開しています。アメリカにはプロジェクト・グーテンベルグが1971年から著作権切れの作品を公開しています。

私たちは自由に、無料でこれらのサイトを利用できます。各社の電子ブックリーダーなどでも青空文庫はデフォルトで搭載されていたり、電子出版点数稼ぎ?でカウントされていたりします。

もし、著作権の保護期間が50年から70年に延長されると、これらのアーカイブは大きな打撃を受けることになります。現時点で著作権が切れている作品、つまり1962年に亡くなった作家の作品はこれまで通り公開できますが、たとえば今年中に著作権法が変わってしまい、保護期間が70年になると、1963年以降に亡くなった作家の作品は今後20年間公開できなくなってしまいます。

これから10年以内に公開されるはずの作者

どんな作家がいるでしょうか。日本の作家とアメリカのミュージシャンの没年をリストにしてみました。

1964年
尾崎士郎
三好達治
佐藤春夫
高群逸枝
エリック・ドルフィー
コール・ポーター

1965年
ナット・キング・コール
江戸川乱歩
谷崎潤一郎
高見順
山田耕筰

1966年
鈴木大拙
バド・パウエル

1967年
山本周五郎
壷井栄
ジョン・コルトレーン
オーティス・レディング

1968年
藤田嗣治
子母澤寛
ウェス・モンゴメリー

1969年
高坂正顕
高野悦子
ブライアン・ジョーンズ
長谷川如是閑
伊藤整

1970年
冠松次郎
ジミ・ヘンドリックス
ジャニス・ジョプリン
坂田昌一
沢田教一
大宅壮一
三島由紀夫
アルバート・アイラー

1971年
深田久弥
高橋和巳
平塚らいてう
ジム・モリソン
ルイ・アームストロング
志賀直哉
デュアン・オールマン
金田一京助

1972年
平林たい子
川端康成
ケニー・ドーハム

1973年
大佛次郎
サトウハチロー

長すぎる保護期間は著作者のためにならず

あと数年すれば、江戸川乱歩や三島由紀夫、川場康成といった大作家の作品が自由に読めるようになるはずです。それが突然「20年待って」と言われてしまうかもしれません。実のところ、三島や川端の作品は文庫本で買えるし、図書館に行けば全集とかあるので著作権保護期間が延長されても実害はあまりないのです。それより問題なのは絶版になっているマイナー作家や学者、評論家、無名市民の作品です。売れないから再版されず、古書の価格が数万円に高騰しているとか、そもそも市場に出回っていないとか。でも著作権が切れれば彼らの作品を公開できるんです。どちらが著作権者の志を尊重する行為でしょうか。

この問題に詳しい福井健策弁護士はITmediaでこう語っています。

国内の調査によると、書籍では著者の死後50年を待たずして98%もの作品が市場から姿を消してしまいます。売られていないものの保護期間をいくら延ばしたところで、収入が増える訳がない。むしろ売られていない、ということは非営利セクターが頼りなのです。つまり、図書館や青空文庫のようなデジタルアーカイブ、研究者による研究活動によって人々に伝えられることが生命線なのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください