統計学を駆使して大リーグを変えた男「マネーボール」

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マネー・ボール
マイケル・ルイス著
中山宥訳
武田ランダムハウスジャパン
2006年3月1日 第1刷発行
定価:760円

先日、統計学について調べていたらこの本を紹介している記事があった。大リーグで下位をさまよっていたオークランド・アスレチックスが、統計学的の手法を球団経営に取り入れ、大胆な改革を行うことでトップチームに変身した経緯を描いたという。ブラッド・ピット主演で映画化されたのは知っていたが、それは見ていない。

その数日後、近所の古書店に寄ったら文庫本コーナーで「マネー・ボール」を発見。なんというタイミングだろう。760円の本が350円と値付けされ、さらに100円に訂正されていた。

1990年代後半、大リーグは選手の年俸が高騰し、経営に苦しむ球団が増えていた。球団間の格差も広がり、トップクラスのニューヨーク・ヤンキースとアスレチックスでは年俸トータルが3倍差に。弱小球団は選手の補強にも苦しみ、弱体化することでますます貧乏になる。

そんなアスレチックスのゼネラルマネージャーとなったビリー・ビーンは見た目とか、人気とか、「将来性」といったこれまで野球界で重視されてきた選手選抜方法は間違っていると確信を持つ。彼は大学進学を希望するもニューヨーク・メッツからの高額契約金に目がくらんでプロになり、結局、成功せずに現役を引退した経歴を持っている。

70年代にデータ解析による野球分析を始めたビル・ジェイムスの本に影響を受け、ハーバード大学出身の統計専門家ポール・デポデスタをアシスタントに据えて選手たちのデータを解析する。その結果、勝つために一番重要なのは打率やホームラン数ではなく出塁率であることを発見する。フォアボールででも塁に出れば得点のきっかけになるのであり、フォアボールを掴むには投手とのかけひき・クソ球に手を出さない自制心が必要になる。

こうしてアスレチックスは無名だけど出塁率の高い選手を安く獲得し、高額選手をトレードに出す。さらにシーズン中でも次々と選手の補強を繰り返す。ある時は、あと4日在籍していれば生涯年金がもらえる選手を無慈悲に放り出す。他チームのGMと心理戦を繰り広げ、埋もれている宝を安く手に入れる。ビリー・ビーンにとって、プロ野球はビジネスであり、生き残るためには常に合理化を続けなければいけないのだ。こういった企業にとって当たり前のことが、「社交サークル」化しているメジャーリーグの中では理解されず、徹底的にたたかれた。

アスレチックスも、この本が出た2003年以降低迷したり、盗塁を採用するようになったりと一本調子で来ているわけではない。他球団がビリー・ビーンのやり方を取りれるようになったこともある。

ぼくは野球自体あまり知らないし、ましてやアメリカのプロ野球となると野茂やイチローなど、日本人選手の名前が浮かぶ程度だ。この本を読んで各球団に1軍から5軍まであり、それなりにプロとして食っているということを始めて知った。日本の球団はテレビ局とか鉄道会社といった大企業の宣伝部隊に過ぎず、自立性がない。そもそもコミッショナーが一球団のオーナーに言われてこっそりボールの反発係数を変え、問題になると「私は知らなかったから責任無い」と言い逃れするのだから、終わっているだろう。

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