『調べる技術・書く技術』野村進

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『調べる技術・書く技術』(野村進 講談社現代新書)
帯には”これがプロの「知的生産術」だ!”とある。梅棹忠夫先生の『知的生産の技術』(岩波新書)の時代から、この手の本が好きで、けっこう読んでいる。
仕事術とか、発想法とか名前が変わりつつも常にビジネスマン向けの実用書の一角を占めている。もっとも最近は教養的なものよりも、効率重視で年収を増やすといった、実利追求のものが目立つようになってしまった。


本書もそういう流れの一冊かと思ったが、著者は根っからの社会派フリージャーナリスト。まさにジャーナリストとしてテーマを選び、資料を集め、キーマンを選定し、インタビューし、原稿をまとめるノウハウが満載されている。時には週刊誌のライターとして、時間に追われての執筆もあるわけだが、その過程に「効率」とか「時間単価」という言葉はうかがえない。
そういう意味で、「すぐにビジネスに役立つ実用書」を求める人には、あまり向いてない。
実は著者は1956年7月生まれだからぼくと同じ学年で、同じ市内の中学出身。高校は都立国立高校なので、同期生に知り合いもいるはずだ。ぼくらの世代はビル・ゲイツや西和彦のようにPC黎明期に立ち会った人もいれば、PCに距離を置いてきた人もいる。著者はどちらかというと後者のようで、あまり積極的にデジタルグッズを使ってないようだ。それがまた、効率重視の「知的生産術」とは一線を画しているのではないだろうか。もちろん、資料調べや執筆にパソコン、インターネット、Googleを使いこなしてはいるとのことだが。
ネットと新聞の役割分担について「これなど(クマムシという不思議な生物のこと)、新聞をぱらぱらとめくっていなければ、気づかなかった情報だ。日々の情報がネットよりも総合的に、かつ詳しく盛り込まれている新聞のほうが、こういうヒントを得られる機会が多い。ヒントをつかんだあとは、リンクが得意なネットの出番となる。」と述べている。
ぼくも、近頃はインタビューというと最初からボイスレコーダーを出してしまう。まぁ、だいたい相手がIT企業であり、製品やサービスについて取材するのであり、広報宣伝の一環なのだから、相手も当然だと思うだろう。だが、野村氏のように事件取材では、無理やり踏み込む面もあり、レコーダーを取り出すタイミングも重要なポイントなのだという。下手すれば警戒されてしまい、しゃべってくれなくなることもある。相手の様子次第ではレコーダーはおろか、メモすら取らずに話を聞き、取材が終わった直後に記憶を頼りにメモを起こさなければならないこともあるという。
生身の人間の声を引き出すことは、それほどデリケートな仕事なのだ。
巻末には、文中で紹介したノンフィクション作品および主な参考文献が140冊ほどリストアップされている。恥ずかしながら、このリストの中でぼくが読んだことがあるのは数冊に過ぎなかった・・・

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