04/12 Facebookの市町村ページに群がる人々

エルデがシステム開発を担当して構築した、島根県海士町の映像交流サイト海士テレビ locomi。これを他の自治体に向けて拡販しようと企画を練っているのだが、ある自治体から「FacebookとYouTubeで実現できるのではないか」と厳しいコメントをもらった。

locomiは、一言で説明すれば「管理者による映像公開承認機能を持ったYouTube+デジタルサイネージシステム」。

アップロードされた動画を公開するかどうかは、管理者のチェックが入る。管理者が内容を確認し、問題が無いと判断したら「公開」ボタンをクリックする。このフローによって著作権違反やわいせつ画像などが公開されることを未然に防ぎ、自治体などの公的団体として安心して運営できる映像交流サイトが維持できる。

さらに、HD画質の動画ファイルをセレクトし、場所ごとにチャネルを設定して番組編成して夜間にダウンロードするデジタルサイネージ機能も持っている。海士町のフェリー待合所では島の観光案内を、海士町の岩ガキを出す都内のオイスターバーではカキ採取シーンなど、島根料理を売りとする居酒屋ではカキに限らず、白イカ、隠岐牛など様々な海士の特産物に関する映像を上映している。

これを海士町だけでなく、食材を大都市に売り込みたい各地の農村・漁村、地域住民のコミュニティ作りに活用したい都市部など、全国自治体に向けてASPとしてサービス提供をしようと考えたわけだ。

ところが「無料のFacebookやYouTubeがこれだけ普及しているのに、有償のサービスをやる意味、勝ち目はある考えているのですか」と言われてしまった。

全世界で7億ユーザー、日本国内でも1000万人を越えたとか、時価総額4兆円で株式公開だとか、Facebookは注目の的だ。企業や個人だけでなく、官庁や自治体もぞくぞくFacebookページを開設している。中でも佐賀県武雄市が市の公式サイトをそっくりFacebookに移すという大胆な施策を取り、話題を集めている(その自治体の方から聞くまで武雄市のことは知らなかったのだが・・・)

だけど、Facebookは万能メディアではない。Facebook社Marketing Asia Pacific 担当のMeg SloanさんがfMCで行ったキーノートスピーチによれば、「Facebook上で、ちょっとした情報が共有されて、それにたいして返信が行なわれるのは、生活・関係性を円滑にするためなのです」ということだ。家族や友人とのパーティのようなものだという。

一方、自治体のオフィシャルサイトに求められているものは何か。自治体職員と「ちょっとした情報を共有したい」わけではないだろう。ぼくが自治体のWebサイトにアクセスするのは住民票や印鑑証明はどこで取ればいいのか、図書館や公民館の休館日はいつなのかといった、ストック的な情報を調べたいのが一番だ。

Facebookでは、過去の情報を検索することができない。ライバルであるGoogleに対してはRobotを拒否しているから、Googleでも調べられない。「タイムライン」という言葉通り、時系列でどんどん情報は流れてしまう。

入学式があったとか、桜祭りが開催されたとか、運動会が開催されるとか…、フロー的な情報を掲載し、それに対して「いいな」ボタンをクリックするとか、コメントをつけるという使い方には適しているのだけど、ストック的な「調べ物」に関しては不得意なのだ。

さらに言えば、無料のSNSというのは運営主体とユーザーとの間にサービス契約が結ばれているわけではない。利用規約が公開されていて、それをユーザーが了承することで会員になったり、ページを作ることができる。相互の了承に基づく契約ではないから、運営側が一方的に利用規約を改定することも自由だ。実際、Facebookは2012年4月1日をもってFacebookページを強制的にタイムラインデザインに変更した。mixiなんか、ころころデザインやサービスを改訂しており、以前は真ん中に表示されていたコミュニティの新着情報がだんだん隅に追いやられ、ほとんど目に着かなくなってしまった。

デザインのカスタマイズも実質不可能、やるならプラグインを駆使するしかなく、そのハードルは低くない。

となると、ある程度長期的なサービスを提供しなければならない自治体が、Facebookにべったり依存するのは問題だろう。

Facebookは米国企業だから、トラブル発生時には「米国カリフォルニア州サンタクララ郡に所在する州裁判所または連邦裁判所で解決するものとします」、米国外のユーザーは「個人データが米国に転送され、米国で処理されることに同意します」と利用規約に明記されている。もしも自治体とFacebook社との間でトラブルが発生したら、サンタクララまで弁護士を派遣するのか。国によっては公的機関が外国のサーバーを利用することを制限しているところもある。日本の法律では犯罪とならないコンテンツが米国法では違法ということもありえる。

くだんの自治体職員の方からは「1,000万人を越えるユーザーを抱えるFacebookにどうやって対抗するのかが見えません。武雄市の事例がFacebookを活用して成功しているとは必ずしも言えませんが、時代は巨大なユーザー数を有する無償のSNSのビジネスモデルに取り込まれています」と言われた。だけどSNSのユーザー数と無償ということは、自治体のサービスをやる上ではほとんど意味がない。

Facebookにある自治体ページを調べてみたのだが、「いいね」にしても「話題にしている」にしても、数値的にはきわめて寂しい状況だ(2012年4月12日現在)。

市町村ページ いいね数 話題にした数
佐賀県武雄市 13,069 1,253
岩手県広聴広報課 2,720 229
熊本県熊本市 (わくわく都市 くまもと) 1,302 363
ネギ太(米子市公式キャラ ヨネギーズ) 1,146 141
千葉県千葉市役所 1,050 195
沖縄県金武町 973 153
茨城県農林水産部販売流通課(うまいもんどころ茨城) 723 105
茨城県広報広聴課(茨城の魅力を伝えたい) 699 194
神奈川県小田原市(小田原シティプロモーション) 480 80
茨城県桜川市 431 81
石川県七尾市 412 131
鳥取県米子市 387 16
北海道小樽市役所 373 84
愛知県岡崎市広報広聴課 362 117
岡山県玉野市 345 96
福井県あわら市役所 Awara City 319 67
長崎県平戸市役所 298 109
長野県小諸市 237 8
香川県宇多津町 229 125
鳥取県広報課 220 32
茨城県水戸市観光課・水戸観光協会 213 108
茨城県国際観光推進室 151 15
宇都宮県宇都宮市 84 10
富山県砺波市役所 45 2
鳥取県岩美町 31 4

話題になっている武雄市は1万人以上が「いいね」と言っているのだが2位は5分の1。人口で武雄市をはるかに越える千葉市や鳥取県のが10分の1以下であり、砺波市や岩美町の数値はほとんど個人のFacebookページレベルだ。

しかもFacebookは検索機能が貧弱なため、ほとんどのFacebookページを検索で探すことができない。自治体の公式Webサイトからリンクでたどった方が手っ取り早い。そのページにたどり着いても、過去のコンテンツを検索できないときている。

もちろん、これまでほぼ不可能だったリアルタイムで提供されるイベント告知、報告やそれを媒介とした自治体職員と住民との対話などは、Facebookならではのメリットだと言える。ただ、何がなんでもFacebookがいいのだとか、無償プラットフォームだから税金を使わなくてもサービスが提供できるというのは幻想に過ぎない。

デザインや機能に制約が多いFacebookで自由なコンテンツを作ろうと思えば、それなりの能力を持った開発会社に発注しなければ無理だろう。そういった費用を考えると、決して安く済むものではない。それこそ映像公開、映像アーカイブといった機能で考えてみれば、それに特化しているlocomiのようなサービスを使う方がよっぽどローコストだ。

Googleで検索すると、Facebook導入とか活用をうたったセミナーが目白押しだ。中にはかなり危ないセミナーも見受けられる。こういったハイエナみたいな連中に自治体が食い物にされるのではないか心配だ。

「04/12 Facebookの市町村ページに群がる人々」への1件のフィードバック

  1. 武雄市は、なんといっても市役所に「Facebook課」があって、市のHPをフェイスブックにしちゃったわけですから、別格も当然でしょう。
    しかし、いくら便利で利用者が多いからといって、市役所にFacebook課っていうのもどうかと思うんですけれど。
    やはり、自治体は自治体で、情報管理しないとねえ。

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